子供との食事中、「あ、ちょっと一口が大きかったかも」とヒヤッとした経験はありませんか?
現在小学2年生になる娘がもっと小さかった頃、食事のたびに目を離せず、喉を詰まらせないか常に気を張っていたのを今でも鮮明に覚えています。
子供の気道は非常に狭く、大人なら問題ないサイズの食べ物やおもちゃでも、簡単に塞がってしまいます。
救急の現場でも、子供の誤嚥(ごえん)による出動要請は決して珍しくありません。
万が一の事態が起きた時、救急車が到着するまでの数分間、子供の命を守れるのは一番近くにいる親御さんだけです。
この記事では、いざという時にパニックにならずに対処できるよう、正しい「異物除去法」の手順を年齢別でわかりやすく解説します。
子供が喉に詰まらせた!危険を知らせる「チョークサイン」とは?
子供が喉に異物を詰まらせた時、最初は声を出して泣くこともできません。
そのため、周囲が気づくのが遅れてしまう危険性があります。
緊急事態を知らせる世界共通のサインが「チョークサイン」です。
- 両手で自分の首のあたりを強くかきむしる
- 急に顔を真っ赤にして、声を出せずに苦しがっている
このような仕草を見せたら、すぐに異物除去法を開始する必要があります。
さらに時間が経過すると、顔や唇が青紫色になる「チアノーゼ」という非常に危険な状態に陥ります。
ためらわずに119番通報と応急処置を行ってください。

【年齢別】正しい異物除去法(応急処置)の手順
異物除去法は、対象の年齢(体格)によって適切な方法が異なります。
大きく分けて「1歳未満」と「1歳以上」で手順が変わるため、しっかり確認しておきましょう。
1歳未満(乳児)の場合:背部叩打法・胸部突き上げ法
乳児に対しては、背中を叩く「背部叩打法(はいぶこうだほう)」と、胸を押す「胸部突き上げ法」を交互に行います。
【背部叩打法の手順】
- 片腕に乳児をうつぶせに乗せ、手のひらで下あごをしっかり支えます。
- 頭を胸より低い位置に下げます。
- もう片方の手のひらの付け根で、背中の真ん中(肩甲骨の間)を「ドンドンドン」と力強く5回叩きます。
【胸部突き上げ法の手順】
- 背部叩打法で取れない場合、仰向けにひっくり返します。
- 頭を胸より低い位置に保ちます。
- 胸の真ん中(左右の乳首を結んだ線の少し下)を、指2本で力強く5回圧迫します(心肺蘇生法の胸骨圧迫と同じ要領です)。

プロの視点:なぜ乳児に腹部突き上げ法(ハイムリック法)はダメなの?
乳児は内臓(特に肝臓)が未発達で、肋骨のガードが十分にありません。
お腹を強く圧迫すると、内臓破裂などの致命的な損傷を引き起こす危険性が高いため、絶対に避けてください。
1歳以上〜小児の場合:背部叩打法・腹部突き上げ法(ハイムリック法)
1歳を過ぎてしっかり歩けるようになった小児からは、「背部叩打法」に加えて「腹部突き上げ法(ハイムリック法)」を組み合わせて行います。
【背部叩打法の手順】
- 子供の後ろに回り、片手で胸や下あごを支えて少し前かがみにさせます。
- もう片方の手のひらの付け根で、肩甲骨の間を力強く何度も叩きます。
【腹部突き上げ法(ハイムリック法)の手順】
- 子供の背後から両腕を回し、抱え込むようにします。
- 片方の手で握りこぶしを作り、親指側を「おへその少し上、みぞおちより下」に当てます。
- もう片方の手でそのこぶしを握り、「斜め上方に向かって、すくい上げるように」素早く力強く引き上げます。

※異物が取れるか、意識がなくなるまで「背部叩打法」と「腹部突き上げ法」を数回ずつ交互に繰り返してください。
【要注意】やってはいけない間違った異物除去法
焦っていると、ついやってしまいがちなNG行動があります。
状況を悪化させないためにも覚えておきましょう。
- 指を無理やり奥まで突っ込む
目に見える位置に異物がないのに指を入れると、異物をさらに奥へと押し込んでしまう危険があります。 - 掃除機で吸い出す
口の中や気道の組織を傷つける恐れがあり、推奨されている救命処置ではありません。 - 水を飲ませる
気道に詰まっている状態でお茶や水を飲ませると、水分ごと気管に入り込み、さらに呼吸ができなくなる恐れがあります。
異物が取れても安心しないで!処置後の注意点と119番通報の基準
「ポンッ!と異物が飛び出して、呼吸が戻った。ああ良かった…」
実は、ここで終わらせてはいけません。
腹部突き上げ法(ハイムリック法)を行った場合、強い力でお腹を圧迫しているため、見えないところで内臓を損傷しているリスクがあります。
異物が無事に取れたとしても、必ず医療機関(小児科・救急外来)を受診して、医師の診察を受けてください。
また、次のような場合は応急処置を続けながら迷わず119番通報をしてください。
- 異物がなかなか取れない
- 顔色が悪くなってきた
- 途中で意識がなくなってしまった(すぐに心肺蘇生法=胸骨圧迫と人工呼吸に切り替えます)
今日からできる!子供の誤嚥(ごえん)を防ぐ予防策
異物除去法を知っておくことはもちろん大切ですが、一番は「詰まらせない環境」を作ることです。
- 危険な食べ物は小さくカットする
ミニトマトやブドウなどの丸くてツルッとしたものは特に危険です。必ず4等分にカットしてから与えましょう。節分の豆類や、お餅も要注意です。 - 食事の環境を整える
歩きながら、遊びながら、寝転びながらの食事は誤嚥のリスクを跳ね上げます。「食事の時は座って食べる」というルールを徹底しましょう。 - トイレットペーパーの芯を基準にする
子供の口の大きさは、約4cm(トイレットペーパーの芯の直径と同じくらい)と言われています。この芯を通り抜けるサイズのおもちゃは、誤飲の危険があるため手の届かないところに保管してください。
まとめ:「もしも」の時にパニックにならないために
子供の窒息事故は、どれだけ気をつけていても一瞬の隙に起こり得ます。
「もし今、目の前で喉を詰まらせたらどう動くか?」を日頃からシミュレーションしておくことが、子供の命を守る最大の防御になります。
今回ご紹介した背部叩打法やハイムリック法は、やり方を「知っている」だけでなく、いざという時に「行動する」ことが大切です。
ぜひ、この記事をご家族やパートナーにもシェアしていただき、クッションやぬいぐるみなどを使って、手の位置や力加減を確認してみてくださいね。


